オールドファーム・ダービーとは?
(Chase Your Sportより引用)
オールドファーム・ダービー(Old Firm Derby)とは、スコットランド最大の都市グラスゴーに本拠地を置くセルティックとレンジャースの試合を指します。
Old はご存じの通り「古い」や「昔なじみの」、そして Firm は「固い」や「会社」などの意味がある言葉です。
この両者の戦いが「オールドファーム・ダービー」と呼ばれる理由については、以下の二つの説があるります。
1. コメンテーター説
1つ目の説は、とあるコメンテーターが “Like two old, firm friends(2人は昔ながらの、固い絆で結ばれた友のよう)” と表したことに起源があるというものです。
セルティックとレンジャーズは共にスコティッシュ・フットボールリーグの創設以来、長きに渡ってしのぎを削っているクラブなので、このように表現されるのも納得がいきますね。
2. 雑誌の風刺画説
2つ目の説は、『The Scottish Referee』という雑誌に “PATRONISE THE OLD FIRM: RANGERS, CELTIC, LTD” という風刺画が掲載されたからというものです。
この英語は「オールドファーム(両クラブの総称)のスポンサーになりましょう。」のような意味ですね。

(The Celtic Wikiより引用)
オールドファーム・ダービーが商業的価値に高い持っていることを示すために、このような風刺画が使用されていたのだと思います。
両チームの基本情報
Celtic |
Rangers |
|
Celts |
Gers |
|
Celtic Park |
Ibrox Stadium |
|
(Sky Sportsより引用)
Celtic / セルティック
セルティックには The Bhoys(ザ・ボーイズ)という愛称もあります。このように Boy を Bhoy とスペリングをするのは、アイルランド訛りの柔らかい B の発音を表しているからなんだとか。
エンブレムにある四葉のクローバーは、1890年代にセルティックパークのピッチの中央で見つかったクローバーに由来があって、それぞれの葉が Hope, Faith, Love, Luck の表しているそうです。
本拠地のセルティック・パークは1892年に開場した歴史のあるスタジアムで、60,832人というスコットランド第2位の収容人数を誇っています。
(celticfcより引用)
Rangers / レンジャーズ
レンジャーズには The Light Blues(ザ・ライトブルーズ)や The Teddy Bears(ザ・テディベアーズ)などという愛称もあります。
レンジャーズのエンブレムには、赤いライオンが中央に配置され、その下にクラブのモットーである READY の5文字があしらわれています。
本拠地のアイブロックス・スタジアムは1899年にアイブロックス・パークとして開場し、1997年に現在の名称に変更されています。収容人数は50,987人。
(rangersfcより引用)
ちなみに、「1939年1月、セルティックとの試合には118,567人の観客が詰めかけた。」という情報が Wikipedia にありました(笑)
2チームの位置関係
「ダービー」と言うだけあって2チームのスタジアムは車で10分ちょっとの距離しか離れていません。これは間違いなく、試合時にスタジアムが盛り上がる原因の1つでしょう。
両スタジアムの間を流れるクライド川(The River Clyde)をレンジャーズのサポーターが発煙筒で赤くライトアップしたりするそうです。
試合の雰囲気
動画にあるように、試合中はサポーターの大歓声が響き渡り、ゴールが決まったときにはスタジアムが総立ちです。中村俊輔のゴールが凄すぎるのもあると思いますが。
PKの際には You can feel the tension.(あなたもこの緊張感が感じ取れると思います。)という実況が入っていますね。そして、試合終了直後に乱闘未遂。
それほどまでにヒートアップする戦いだということが凝縮された5分55秒の動画だと思います。こういった雰囲気の中で、大活躍をしてしまう中村俊輔や旗手怜央には尊敬の念しか湧いてきませんね。
ダービーの歴史
101引き分け レンジャーズ168勝 |
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セルティック 5-2 レンジャーズ |
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セルティック 7-1 レンジャーズ |
(Daily Recordより引用)
歴史的背景
この両チームの対戦に関しては、歴史的背景の理解が必須です。特に鍵を握っているのが、「宗教」問題です。
16世紀、スコットランドの改革運動によって、国教がカトリックからプロテスタントへ移行されました。
しかし当然ながら、改革運動に反対していた者たちもいたため、スコットランド内で宗教的に対立する構図ができあがったのです。
さらに、アイルランド北部からプロテスタントとカトリックの両方が宗派が移民してきたことにより、事態はさらに悪化していきました。
職場や地域コミュニティーにおいて、「カトリックは応募してくるな」「プロテスタントは出ていけ」といった抗争が起こっていたのです。
これが、21世紀になった今でも、オールドファーム・ダービーに形を変えて残っていると言われています。
なぜならセルティックはカトリックのマリスト兄弟によって、そしてレンジャーズはプロテスタント労働者階級が中心となったチームだったからです。
(Daily Recordより引用)
近い距離にホームスタジアムを置きながら、異なった信念のもとにアイデンティティが形成された両チームなので、「宿命のライバル」とみなされるのも納得ですね。
とはいえ、現代において宗派主義が幅を利かせることはありません。宗教自体をピッチに持ち込むのはフットボールの「あるべき姿」ではないからです。
では、なぜ人々はこれほどまでにオールドファーム・ダービーに熱くなるのでしょうか?
『人々は過去に「宗教」を通して表現していた「信念」を、オールドファーム・ダービーを通して発散している。』
個人的な解釈ですが、このように考えると、ファンの熱狂も理解できる気がします。
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